2016-05-16

美しい言葉/『塔和子 いのちと愛の詩集』塔和子


 ・「浦島記」
 ・美しい言葉

 どんな所に置かれても光る言葉を
 首にかけて置きたい

 何時までたっても色あせない言葉を
 目の底にやきつけて置きたい
 長い長い時間の歴史の上で
 美しい風化を遂げた言葉の清潔さを
 耳に飾って置きたい(「墓」)

【『塔和子 いのちと愛の詩集』塔和子〈とう・かずこ〉(角川学芸出版、2007年)】

「何気に」とか「ムカつく」とか「――じゃね?」などという言葉を聞くと殺意を覚える。公私の区別がつかない愚かさと、美意識のかけらもない浅薄さが露呈する。汚い言葉は、粗雑な心、汚れた心から生まれる。

 低俗なテレビタレントの影響もあるのだろう。特に芸人を自認するお笑いタレントの言葉遣いが酷い。


 上京して直ぐに気づいたのは中年女性が口にする女言葉であった。「そうよ」「――だわ」という響きが耳に心地よかった。私が生まれた北海道では性差を強調するような言葉遣いはない。今きちんとした言葉で話すのはオカマだけのような気がする(笑)。彼女たちの会話には敬語や丁寧語がふんだんに盛り込まれている。

 世の乱れは言葉の乱れとなって水面に現れる。そして言葉の乱れは思想の乱れとなり、モラルを崩壊させる。

 ブッダが最初に説いたのは八正道であった。その中に正語(しょうご)がある。「妄語(嘘)を離れ、綺語(無駄話)を離れ、両舌(仲違いさせる言葉)を離れ、悪口(粗暴な言葉)を離れることである」(Wikipedia)。また四摂法(ししょうぼう)には愛語とある。慈愛に満ちた言葉・優しい言葉との意である。

 容姿を変えることは難しい。が、生き方を変えることは常に可能だ。醜い心を変えることは難しい。が、美しい言葉を心掛けることは誰もができる。

塔和子 いのちと愛の詩集

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