2015-01-17

安冨歩、谷沢永一、外山滋比古、陳舜臣


 2冊挫折、2冊読了。

実録 アヘン戦争』陳舜臣〈チン・シュンシン〉(中公新書、1971年/中公文庫、1985年)/陳舜臣とは相性が悪く、かつて何冊か手にしたことがあるが一冊も読み終えたことがない。どうも文体が私の脳に馴染まない。

思考の整理学』外山滋比古〈とやま・しげひこ〉(ちくま文庫、1986年/筑摩書房、1983年『ちくまセミナー 1』の文庫化)/昔、読んだような読んでいないような……。ヒラリヒラリと舞う文章が心地よく、それだけに騙されているような気がする。巧みすぎて印象が薄い。そこにどうしても嘘を感じてしまう。例えば元宮内庁長官の羽毛田信吾〈はたけ・しんご〉という人物は名文を書くが、人物としての評価は非常に低い。私が尊敬する菅沼光弘は宮内庁時代の仕事を問題視し、あまり尊敬していない副島隆彦に至ってはボロクソに書いている。アクの強い個性を好む私にとってはどうでもいい本だ。

 3冊目『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一〈たにざわ・えいいち〉(クレスト社、1995年/ワニ文庫、1997年)/大江健三郎のノーベル賞受賞後に刊行された。『完本・紙つぶて』と比べると文章の劣化が目立つ。しかも後味が悪いときている。表紙見返しで渡部昇一〈わたなべ・しょういち〉が「傑作」とエールを送っているが、気分が滅入るだけだ。それでも読む価値がある。なぜというに、東京裁判史観に毒された進歩的文化人の正体を明快に解き明かしているためだ。俎上(そじょう)に乗せられたのは主に大江の海外講演で、彼は天皇陛下や日本を貶めることに全力を傾注してきた事実がわかる。公の場に引きずり出して公開討論させるべきだろう。ノーベル賞の授与も歴史ある日本の皇室を苦々しく思っている西洋白人の思惑が働いているとしか思えない。

 4冊目『幻影からの脱出 原発危機と東大話法を越えて』安冨歩〈やすとみ・あゆむ〉(明石書店、2012年)/続『原発危機と「東大話法」』である。安冨歩にはしなやかな「生の流儀」がある。その態度に私は感銘を受ける。論より振る舞いが重い。真実は挙措(きょそ)の中に表れる。現役の東大教授が同じ東大の原発御用学者を真正面から批判している。なかなか出来ることではない。安富は数少ない真の教師であると思う。

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